実にユルいネコに思わず笑みがこぼれます。最近、SNS上には「自由気ままなネコの珍行動」みたいな動画がよく流れてきますよね。そんなネコ動画に癒されているクチなので、このユルさに共感を覚えます。

そんな「グッチ」のコレクション・レビューは、ミラノのメーンリポーター鴨井里枝記者のテキストでどうぞ。

レポートにもあるように今季の「グッチ」のポイントはトラブル・アンドリューというカナダ人アーティストとのコラボレーションです。自分の名前に“トラブル”と冠するなんて、さぞかしヤンチャなんだと思いますが、実際これまでの作品はいわば「グッチ」のロゴのパロディーであり、キワドさ満載です。「G」が縦にビヨンと伸びたり、グラフィティー仕様だったりと、ストリートカルチャーの中に「グッチ」を引き込んでいます。

ちなみに、アンドリューにインタビューをした鴨井記者から聞いた話ですが、彼の周辺では「Good」のことを「Gucci」と言うそうです。つまり、イイネと思う時は「イッツ・グッチ」、「それグッチじゃん」となる訳です。面白いです。ということは朝の一言「グッド・モーニング」は「グッチ・モーニング〜」となるのでしょうか。それではもはやお父さんのダジャレですね。と、まあ、こんなくだらない会話のきっかけをくれる楽しいコラボレーションです。

ラグジュアリーブランドが、自分たちのロゴを遊ぶアーティストを叩くのではなく、逆にピックアップして取り込んでしまう。そこにミケーレのセンスとビジョンを見ます。昨年実施した「♯GucciGram」というプロジェクトも同じ考え方でした。ロゴという財産とデジタルツールを生かし、無名・有名アーティストの力を巻き込みブランドの力に変える。芸術の国イタリアらしい発想だと思います。そこからルネサンス期のパトロンと芸術家の関係を連想すると言ったら大げさでしょうか?今の「グッチ」には、ローマの神話や宗教の世界が濃厚なだけにそんなことを考えてしまいます。

ミケーレによる「グッチ」の大胆な方向転換は、賛否両論あります。ファッショニスタたちから熱狂的に迎え入れられている一方で、日本の百貨店関係者によると、ファーストシーズンである2015-16年秋冬は好調とは言えない結果に。尖った「グッチ」が従来の顧客の離反を招くことは予測されていましたが、そのマイナスをカバーするだけの新客獲得は簡単ではないようです。

ビジネスですから、どんなに優れたクリエーションでも売れなければ成功とは言えません。ただ、同じケリング傘下である「サンローラン(SAINT LAURENT)」も、エディ・スリマン就任直後は顧客離れを招き賛否両論ありましたが、今ではMDのバランスが整い絶好調です。巨大なラグジュアリーブランドが、新しい一歩を踏み出しドライブをかけるには、強いクリエイティビティーとそれを生かすMD、店頭、PRの4輪が必須である前例がそこにあります。これからの「グッチ」が4輪駆動でどこへ進むのか注目です。

先月、大阪文化服装学院というファッションの専門学校の卒業審査会で「新しい『グッチ』とミケーレの考え方にインスパイアされて作品を作りました」という学生さんと出会いました。

同校はイタリアのポリモーダと提携しており、彼の作品は見事「ポリモーダ賞」を受賞し、6月にフィレンツェで開かれるポリモーダの卒業展に出品されるそうです。フィレンツェと言えば「グッチ」の創業地。巡り巡って日本の若者の作品がフィレンツェでイタリアの人の目に触れるだなんて、なんだか感慨深いです。